「瘧」
京男 「御所、行ったことありますか?御所言うたら、えらいところや。天子様の おられるところや。日本の中心や。御所の紫宸殿の砂利を掴んでみなはれ。 瘧が落ちるいいますのや。」 東男 「御所がなんでぇ。江戸は徳川様のおられるところだ。江戸城の砂利を掴んでみろい…」 京男 「どうなります?」 東男 「首が落ちらぁ!」
これは落語「祇園祭」の一節。京男と東男が酒の席で口げんかを始める話なんだけれど、この中に「瘧」という言葉が出てきたのだが、そもそもよく聞き取れなくて「埃」と聞き間違えていた。
最近ようやく「おこり(瘧)」という言葉が聞き取れるようになって、意味を調べてみた。
瘧とは「世界大百科事典 第2版の解説」によると…
おこり【瘧】
1日とか2日おきというように周期的に悪寒戦慄と発熱を繰り返すという特徴のある病状によって紀元前から中国で知られていた病気である。夏の風邪や山間の悪気などの外邪によって起こされるとされ,湿瘧(しつぎやく)とか痎瘧(がいぎやく),瘴瘧(しようぎやく)など多くの病名が記載されている。他の病気も含まれていたであろうが,主体はマラリアと考えられる。〈おこり〉はこの病気の日本名で,江戸時代まではよく発生した記録がある。
江戸時代までは身近だった、流行り病なわけですね。まあ、実際は高貴な人の近くにある砂利を掴んだからといっても病気が治るなんてことはないのでしょうけれど。
この「祇園祭」。京大阪が関東に対して冷ややかな視線を送っているというのは昔からで、江戸についても昔はある種の「一地方」だったからか、江戸をけなされると気の短い江戸っ子は猛然と反論して、口げんかが始まってしまう。関西弁と江戸弁の流暢な使い分けができる噺家さんで聞くと、関西弁のイントネーションとリズム、江戸弁のイントネーションとリズムの切り替えが心地よい。
橘家圓太郎師匠がお勧めである。